あの頃、僕らはハートを突き抜ける音楽に出会った。

デヴィッド・ボウイの美学は永遠に。

2016年1月10日、「20世紀で最も影響力のあるアーティスト」にも選ばれ、数々の名曲を生み出したイギリスのロックアーチスト、デヴィッド・ボウイが18ヶ月の闘病(肝臓がん)を経て亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします。

そして、その2日前、69歳の誕生日に残したニュー・アルバム『★(ブラックスター)』にはボウイらしい辞世の歌が散りばめられている。

70年代から常に変化を恐れず、革新的な音楽を生み、時代を駆け抜けたボウイ。その世界観は常にセンセーションで刺激的であった。トーキング・ヘッズからセックス・ピストルズやザ・スミスに至るまでの英国や欧州、米国のシンガーやバンドに絶大な影響を与えたのは必然であり、彼自身はソウルからジャズまでの影響をしっかりと受け止め、音楽業界の中で常に抜きんでている存在であり続けた。

最後のシングルとなった「Lazarus(ラザロ)」のミュージックビデオでは目に包帯を巻いてベッドに横たわっている。そして「誰にも盗めないドラマが俺にはある/誰もが俺のことを知っている」と歌って、死に際にしても彼の美学は貫かれていた。

『★』のプロデューサーであり、ボウイの長年のコラボレーターでもあるトニー・ヴィスコンティは、フェイスブックに寄せた追悼文で「ボウイの最後の作品は、意図的な別れの言葉であり、『別れにあたっての贈り物なのだと。そして、「彼は自分のやり方、最良のやり方を望んだ。彼にとっては、死も、生と変わりがない――アートとしての作品なのだ。彼はわたしたちのために『★』を残してくれた。別れのプレゼントとして」と記している。

何種類ものベスト・アルバムやアンソロジーも編まれてきたボウイだが、その豊潤すぎる創造性は、数枚の薄っぺらなCDに収まるものではない。ヒット・チャートを賑わすことが目的ではなく、新しい方程式を生み出すことにエネルギーを注ぎ、時代の先を行く素晴らしい楽曲の数々を彼は残してきた。

「スペイス・オディティ」「アッシェズ・トゥ・アッシェズ」「ヒーローズ」「スターマン」「フェイム」「ジャンプ・ゼイ・セイ」「アンダー・プレッシャー」「レッツ・ダンス」など、その名曲の数々は、これからもずっと聴き継がれるだろう。

グレイテスト・ヒッツの輝かしい星々の陰には、光を放つことのない“黒い星々=ブラック・スター”の存在もあることをボウイは最後にして最高の美学として示唆してくれたようだ。

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